2013年3月29日金曜日

書家の求める美



「書家の言葉は『見る言語』です」

書家・杭迫柏樹(くいせこ・はくじゅ)さんは、そう言う。



「たとえば書の表現において、『叫ぶ』感じは一字とか二字の作品になります。『しゃべる』もしくは『つぶやく』感じならば、同じ速度ではなくメリハリをつけます」

筆の止まると進む。つまり「運筆」によって、書家はその時々の心境を明らかにしていくのである。



「書は『線の芸術』です。なぜなら、そこに人間の心情が吐露されているからです」と杭迫さんは言う。「その心象表現を突き詰めていくと、書美の究極は『線一本』、『点一つ』でも成り立つと考えています」。

打てば快音の響きがし、切れば血の出るような線。

杭迫さんはそうした美を求めながら、常々筆を持っているのだという。



「書家というのは、筆触感を求めて一生苦労して死んでいくわけです」

杭迫さんは毎朝4時には起床し、朝食までは必ず臨書をして筆感触を磨いていると話す。

「運筆を通して自分を掘り下げ、哲学をしているとも言えます」

畢竟、書はその人の人間性と大きく関わらざるを得ないのだ。






出典:墨 2011年 12月号 [雑誌]
「漢詩を書く極意とは 杭迫柏樹」

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