2013年11月11日月曜日

乖離する心と身体をつなぐ「アレクサンダー・テクニーク」



ボディワークとは?


ボディワークとは1960年代以降、アメリカで使われはじめた用語である。

カウンターカルチャーや東洋思想の影響のもと、「人間とは心身が相互に影響しあっているため、切り離してとらえることができない」との洞察が発達し、さまざまな心理療法や技法が生まれた。その中でも、主に身体(身体意識・身体感覚・身体イメージ)から働きかける身体技法をボディワークといい、

その代表的なものに
「アレクサンダー・テクニーク」
「フェルデンクライス・メソッド」
「ロルフィング」
がある。

これらのボディワークに共通していることは、身体とは「全体性を有してつながっているもの」という身体観をもっていることであり、また身体を通した”気づき”を重視していることである。

ロルフィングは被術者が歩いているところを観察するなど、身体の機能(動き)を見ているところに特徴がある。また、アレクサンダー・テクニークやフェルデンクライス・メソッドなどは、自らの身体の感覚に気づかせ、身体が本来もっている正しい姿勢や動きを引き出そうとするワーク(働きかけ)をより重視している。[引用:秘伝2013年9月号]




アレクサンダー・テクニークとは?


フレデリック・マサイアス・アレクサンダー氏が創始したボディワーク。

アレクサンダー氏は、有望な舞台俳優としてキャリアをスタートさせたものの、しばらくすると舞台上で声がかすれてしまったり、出なくなったりという困った事態に見舞われるようになった。こうした医学では対処しえない事件に対して、アレクサンダー氏は自ら原因究明に乗りだした。

原因を発見するまでには長い時間を要したが、徹底的な自己観察の結果、セリフをしゃべろうとした瞬間、無意識的に”首の後ろを縮めてしまう”という悪癖を発見した。その首の緊張が、能力の発揮を妨げていたのである。

これはアレクサンダー氏だけの癖かと思いきや、多くの役者が同様の悪癖のため能力を発揮できずにいることに気づき、これを他の俳優たちに伝えたことが契機となり、やがて多種多様な分野において、「アレクサンダー・テクニーク」として普及するようになった。



アレクサンダー・テクニークにおいては、不必要で無意識的な反応や緊張に気づき、これを抑制していくことを学習する。この際、とくに大事なのが”首の緊張を抑止すること”。頭ー首ー背骨を分離させず、関係性のあるユニットとして認識することである。

アレクサンダー氏は、頭ー首ー背骨が協調して働くとき、人間が原初的に備えている調整機能(プライマリー・コントロール)が活性化され、自らの能力が存分に発揮されると唱えている。

現在、アレクサンダー・テクニークは、世界中で多くの音楽・演劇系学校での正規の課程として採用されているだけでなく、西欧においては補完医療の一つとして保険が適用されるほどの認知度を得ている国もある。[引用:秘伝2013年9月号]








アレクサンダー・テクニークのボディワーカー「石坪佐季子(いしつぼ・さきこ)」さんは言う。

「動物にうまくできることが、人間には難しい場合が多々あります。四つ足の動物は、頭が動く方向と体幹(背骨)の方向が一致しています。ところが人間は背骨が直立したため、意思と動作が乖離してしまったのです。だからこそ、身体の再教育が必要なのです」

確かに、背骨が水平な動物は、身体が進む方向にそのまま”頭ー首ー背骨”のラインが伸びている。一方、背骨の立った人間はそのラインが上方向のまま、身体を前へと進めていくため、進むほどに心と身体は乖離していくかのようだ。

「人間は、自然のままの状態をなかなか維持できずに、自分で邪魔してしまっています。そのような場合、心身の何が変わってしまっているのかに気づくのがポイントです。とくに頭ー首ー背骨が”関係性をもって動けているかどうか”、自らを省みることが大切です」



動物同様、人間にも自らを調整する能力が備わっている。それをアレクサンダー・テクニークでは「プライマリー・コントロール」と呼んでいる。

石坪さんは言う。「元々もっているにも拘らず、往々にしてそれが見失われているのは、頭ー首ー背骨のつながりが分断されたり、頭と首の接合部に緊張が生じるためです。それに気づいたのが、アレクサンダー氏の大発見でした」

つまり、われわれ人間が自由に身体をコントロールするには、首の状態が一つのキーになるということである。



「人間は自分を見失い、一時的に機能性が低下することがあっても、自分を取り戻すことでその存在自体が完全なものとなります」と石坪さんは言う。

石坪さんの言う”自分”とは、全体としての自分である。

たとえば、握った拳を相手に上から押してもらう時、押された部分だけに集中して抵抗しても簡単に崩されてしまう。そこで、意識の置きどころを拳だけではなく、体全体のつながりに向けてみる。すると、そう簡単に崩されることはない。

「夢中になって頑張っていると、自分自身が空っぽになってしまいがちです。そういう時こそ、自分を失うことなく自身に立ち返ることが必要なのです」








”何をするか”より”何をしないか”

それがアレクサンダー・テクニーク

無意識の緊張に気づき、それをやめれば、心と身体がつながりはじめる






ソース:月刊 秘伝 2013年 09月号 [雑誌]


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