2016年4月29日金曜日

垣根のうえの熟した柿 [石黒宗麿]



日曜美術館
アートシーンより



陶芸家
石黒宗麿
(いしぐろ・むねまろ)
1883 - 1968

昭和30年、濱田庄司らとともに最初の人間国宝に認定された陶芸家です。



漆黒に浮かぶ木の葉

『黒釉葉文茶碗』
1943ごろ


黒釉葉文茶碗 石黒宗麿



石黒の名を世に知らしめたのが、「木の葉天目」の再現でした。12世紀の中国でうまれたこの技法は、再現不可能とされていました。

しかし石黒は、試行錯誤をかさねるなか、焚き火の灰に「椋(むく)の葉」だけが原型をとどめていることを発見。幻の器をよみがえらせることに初めて成功したのです。






あくなき探究心は、石黒をさまざまな古陶磁の再現へと駆り立てます。

『白地鉄絵魚文扁壺』
1941ごろ

中国北宋時代の器のカケラを手がかりに、数年がかりで再現した作品です。純白におどる漆黒の魚。あざやかなコントラストをだすため、釉薬の微妙なバランスに苦心しました。


白地鉄絵魚文扁壺 石黒宗麿


渋谷区立松濤美術館 学芸員
大平奈緒子さん

「特定の師をもたなかった石黒宗麿にとっては、古陶磁というものが彼にとっての師であり、先人たちの技術を体得して、それをまた自身の作品の製作にいかし、つくりだしたというところに模倣の意義があったのかと思います」



やがて古陶磁にまなんだ技術を礎(いしずえ)に、自らの個性を開花させていきます。

『柿釉金彩鳥文鉢』
1966 - 67

柿釉の器にほとばしる奔放な線。藁(わら)を束ねた手製の筆でかいたものです。


柿釉金彩鳥文鉢 石黒宗麿



焼き物にむかう自らの境地を漢詩にしたためています。


十年一日徹異端

染泥葛衣綻且寒

白片残陶堆塁々

墻頭柿子紅珊々


異端の姿勢をつらぬき、

捨てた陶器の破片はつもるばかり。

だが、垣根のうえには熟した柿がかがやいているではないか。



彩瓷柿文壺 石黒宗麿



そして、傑作がうまれます。

『彩瓷柿文壺』
1959 - 61

吊るし柿がならぶ情景をえがいた器。

白、黒、オレンジ

発色する温度がそれぞれ異なる色を、絶妙な火のあつかいで見事に表現しています。卓越した技がうみだした、唯一無二の自在の境地です。







引用:日曜美術館アートシーン
最初の人間国宝「石黒宗麿のすべて」




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